日本で働く外国人社員たちはどのような思いで働き、どのような悩みを持っているのでしょうか?
今回は外国人社員たちのホンネを通じ、「日本企業のどのような点を魅力に感じているのか?」また「外国人社員たちを採用する際、トラブルを防ぐためのヒントは何か?」を知っていただければと思います。

多様な表現を持つ日本語ですが、外国人社員とのコミュニケーションの中では、日本語表現が誤解を生むケースは少なくありません。日本人であれば察することができる表現であっても、外国人には曖昧な表現に捉えられてしまうようです。
以下のような表現は、外国人社員の誤解を招きやすいようです。

【誤解を招きやすい表現】
「検討します」
本当の気持ちや疑問に感じたことを明かさず、摩擦を避けるために一旦議論を終えたい時に、日本人はよくこんな表現を用いますよね。この表現ですが、外国人社員にとっては、自分にとって有益な結果として受け取っていいものなのか、ダメなのか、判断に迷うようです。「含みを持たせず、もっとハッキリ答えてよ!」というところなのでしょうか。

「お疲れさまです」
当然上がら、相手に対して「本当に疲れていますね」ということを指摘した言葉ではありません。日本のビジネスシーンでは、労力をねぎらう表現として、ごく自然に使っている方も多いはず。でも外国人社員たちにとっては「疲れるほど働かなきゃならないの」「疲れていませんけど……」という風に捉えられ、表現自体にとても違和感があるそうです。

「わかりました」
外国人は「わかりました」を強く前向きな意味での「Agree(同意する)」という意味で捉えている場合がほとんどです。しかし、日本語でこの表現を用いる意味としては、「とりあえず事情を理解しています」という程度のニュアンスで用いることがほとんどではないでしょうか。「とりあえず事情を理解しているけれど、あなたの意見をもう少し聞いてみないと賛同はできない」という場合に用いられますよね?誤解を避けるためにも、外国人社員には「わかりました」はあまり用いない方がベターでしょう。
とくに、業務上の指示では、まわりくどい言い方は避け、簡潔に分かりやすく説明することが重要です。日本独自の「あ・うん」の呼吸や、「空気を読む」というような曖昧な習慣は通用しないと、覚えておきましょう。

日本で働く外国人にとって、日本人社員の残業は、とても違和感のある光景に映るようです。
某製造メーカーでエンジニアをしているミャンマー人のAさんは、入社間もない頃、定時までにきちんと仕事を終えて帰ろうとしました。すると上司から呼びとめられ「会社に残ってもっとがんばれ。たるんでいる!」と叱られたそうです。
「仕事を早く処理した方が、成果が出ていると言えるのでは?」と考えていたAさんは、黙っていられず、「いつまでも上司の顔色を伺いながら、ダラダラと仕事を続ける方がおかしい」と反論しました。その結果、上司からは「生意気だ」と言われ、社内で大揉めになったそうです。
ここでのAさんの違和感は、「がんばって早く仕事を終わらせたのに、なぜやることのない会社に残らなければいけないのか、その理由がどうしてもわからない」といったところでしょうか。一方、Aさんの上司の立場に立つと、Aさんと同じように仕事で成果をあげることを目指してはいますが、「まずは職場の和を乱さないようにすること」を優先したのでしょう。残業の捉え方の違いが、Aさんには奇妙な習慣のように映り、理解に苦しむ結果になったのかもしれませんね。

このような声はいたるところで聞かれます、外国人から聞かれた際には、これまでの企業文化を押し付けるのではなく、しっかりその理由や背景を説明することが大切だといえます。

さて、日本で働く外国人の多くは、日本式の職場習慣に戸惑っているばかりではありません。今度は、「日本企業で働くことができてよかった」と評価している点について聞いてみました。

ヨーロッパ諸国では、就業規定が厳しく、外国人留学生が留学先で希望する企業に就職することは難しくなっています。またアジア諸国で大手企業に就職しようとすると、コネクションが必要な場合も少なくないようです。一方日本では、在留資格の変更により、大企業への就職であれば比較的容易に手続きが可能です。また母国の現地企業に就職するよりも、日本企業に就職した方が、福利厚生が充実しており、給与水準が高くなることが多いのです。
さらに、母国へ帰国した際も、日本語が扱えて日本企業でのキャリアがあれば、待遇の良い企業への就職の可能性が広がります。

日本企業が外国人社員に求めるものは、端的に言えばやはり「優秀で即戦力になってくれる人物」といったところでしょうか。しかし、海外の企業ほど「即戦力」を重視していないようにも思えます。特に新卒採用の場合、即戦力への期待よりは、人柄や性格、熱意などで判断することが多いでしょう。
日本で働く外国人たちの多くが、入社後の研修やセミナーなどによる社内教育制度に驚いています。前職のキャリアを問わず、これらの制度で一から叩き込まれた内容が、「のちの業務や自身のキャリアアップにつながった」と実感しているようです。
ちなみに、日本企業では昭和40年代頃から海外への進出が増え、現地社員(研修生)に対する教育制度の整備が求められるようになりました。研修制度のニーズ増に伴って、1991年には財団法人国際研修協力機構(JITCO)ができ(2012年に公益財団法人化)、一定期間、外国人実習生を受け入れる「外国人技能実習制度」の仕組みができました。この制度を通じて、多くの外国人が日本で就労し、技術を身につけています。

日本で働く外国人は、日本企業の教育制度や福利厚生など、制度の面に対しては満足していることが多いようです。しかし一方で気をつけなければならないのは、仕事への向き合い方です。ビジネスシーンでのまわりくどい言い方や、残業に代表される日本式ビジネスの習慣には困惑する人も多いようです。
外国人も日本の企業文化を学ぶ必要はありますが、それと同じように雇用する側にも注意が必要です。文化の違いを認め合いながら、問題があれば根気強く相手に説明する心構えと姿勢を大切にしましょう。