外国人の採用に興味をお持ちの企業は多いと思います。グローバル化、社員の多様性の担保、あるいは将来的な海外進出を見据えて……。一般に言われているメリットは数多くありますが、本当のところはどうなのでしょうか?「ウチはまだ早い」と思っていませんか?
今回は、実際に外国人を採用した企業の本音に迫りたいと思います。

出典:厚生労働省(2014年)

上の表をご覧ください。これは、全国の企業を対象に、外国人留学生の採用意向についてアンケートを取った結果です。これによると、半数以上の企業が、外国人留学生の採用に前向きだということがわかります。

出典:株式会社ディスコ(2015年)

もう一つ、こちらの表をご覧ください。これは、すでに外国人の採用実績がある企業に対して、「今年、外国人を採用するかどうか」を尋ねた結果です。これを見ると、実際に外国人を採用した(する)企業は、2015年の34.3%から大幅に増加し、2016年には57.1%となっていることがわかります。「排他的」と揶揄されがちな日本企業ですが、実際には外国人採用企業の6割が、継続して外国人を採用したいと考え、実際に採用活動を始めているのです。

では、その理由とは、どのようなものでしょうか?以下の表は、外国人留学生を採用する目的について、全国の企業を対象に調査したものです。

出典:株式会社ディスコ(2015年)

これを見ると、最も多いのは、理系・文系ともに「優秀な人材を確保するため」であることがわかります。続いて「海外の取引先に関する業務を行うため」といった回答も目立ちます。

それでは、JP JOBSをご覧になっているであろう、技術者採用を行うIT企業では、どのような理由で外国人を採用するに至ったのでしょうか?経営者や採用担当者の生の声を聞いてみました。

「優秀な若手社員を(できれば安く)獲得したかったから」

最も大きく聞かれたのは、上記のアンケート同様に、このような声でした。とりわけ、技術者の採用となれば「優秀な若手を」という思いは、より一層切実です。
少子化が進む日本では、優秀な若手社員を獲得することは徐々に難しくなっています。とくに昨今は、過去最高水準ともいわれる「売り手市場」。2016年度卒業生の大卒求人倍率は1.74倍、求人総数も前年比で1.5万人増となっています(リクルートワークス研究所調べ)。そのような状況下で、大企業と同じ水準の報酬を用意して新卒採用を行っても、知名度や組織力などの面で勝てそうもない。「それなら」と、外国人に目を向けるのもわかりますね。
IT技術者の場合には、当然ながら即戦力となり得るだけの技術力も求められます。となれば、留学生に限らず、現地の専門学校や大学の専門科を卒業した求職者も視野に入れて採用活動を行うことで、効率良く優秀な人材を採用することができるでしょう。

「いつかは海外に進出したいから」

具体的な進出計画まではなくとも、「外国人を雇用することで海外進出への何らかの突破口になるのではないか?」と考える経営者の方は多いのです。また、実際に動き始めている企業では、現地視察に外国人社員を同行させることもあるようです。
たとえ通訳を雇ったとしても、現地の文化やビジネスマナー、会話の細かなニュアンスを理解するのは困難です。そんな時に、その地で生まれ育った外国人社員がいれば、数字だけではわからない、生の情報を直接聞くことができます。
経営者の頭の中には「ゆくゆくは海外拠点の管理を任せたい」との考えもあるのでしょう。実際に、「本人にも入社時からそのように伝えている」といった声も聞かれました。

「社内に新しい風を入れたかった」

会社が安定しているのは良いことですが、あまりにも居心地が良すぎて人が入れ変わらないと、だんだんと発想が似通ってきたり、馴れ合いになってしまったりしがちです。そんな時に、まったく異なる文化圏で育った、意欲の高い外国人が入ると、ほどよい緊張感が生まれるのでしょう。
異なる視点での意見や発想など、「既存の社員にも良い刺激を与えてほしい」と願う経営者は多いようです。

「本業以外でも、いてくれると何かと役立つ」

こちらは、言いづらいですが、本音でもあります。ちょっとした海外の市場調査や、翻訳・通訳、海外出張時の各種手配など、本来の業務以外でも、バイリンガル、マルチリンガルの外国人は、いてくれると何かと便利な存在です。
ただ、そのような業務ばかりになってしまうと「最初の約束と違う」とトラブルの元になりますので、本人との合意の上で、ほどほどに……。

出典:株式会社ディスコ(2015年)

実際に外国人が入社し、働いている様子を見て、どのような変化があったのでしょうか?採用前の観測は正しかったといえるのでしょうか?
上の図を見ると、社内への影響としては「異文化・多様性への理解の向上」が最も多く、次いで、「日本人社員への刺激・社内活性化」につながった、との結果となりました。

実際の声を聞いてみると……
「非常に意欲が高く、与えた仕事をどんどんこなしてくれます。社内でも『負けていられない』という空気が生まれて、活気付きました」
「新しく来た外国人社員は日本語能力がそこまで高くなかったのですが、そのおかげでランチタイムなどに社員が英語を使うようになりました。思わぬグローバル効果です」
「外国人社員は、皆ビジョンがはっきりしていて、『自分がどうなりたいか』『どういう役割を求められているのか』をしっかり認識している印象です。なんとなく働いていた既存社員にとって、良い刺激になっています」

一方で、想像していなかった点としては……
「とても勤勉なOさんは、節約のために毎日手作りのお弁当を持ってきます。おかげでオフィスは毎日12時から、不思議な香辛料の香りに包まれています……。」
これもまた、グローバル化を目指す過程での「洗礼」なのかもしれませんね。

優秀な若手社員を採用したいと考える企業、現在の社風を変えたい企業にとって、外国人の採用は非常に良い選択肢だといえます。とくに、中小企業にとっては、同レベルの日本人を採用するよりも優秀な外国人を採用した方が、経営面でも社内の雰囲気作りといった面でもプラスに働くことが多いのです。
迷っている経営者や採用担当者の皆様は、ぜひ外国人採用の良い面に目を向けて、前向きに検討してみてください。